親の「夜眠れない」には理由がある ― 家族ができるサポートとは

9月3日は「睡眠の日」です。普段はつい後回しになりがちな睡眠ですが、心と体の健康にとって、とても重要な役割を担っています。特に高齢者にとって、質の良い睡眠は日常生活の質を大きく左右します。今回は、高齢者の睡眠の特徴や問題点、家族ができるサポートについて考えてみましょう。


高齢者の睡眠、若い頃と何が違うのか

年を重ねると、睡眠にいくつかの変化が現れます。

  • 眠りが浅くなる
    深い眠り(ノンレム睡眠)の割合が減り、夜中に目が覚めやすくなります。ちょっとした物音やトイレに行きたくなったなどの理由で、中途覚醒が増える傾向にあります。
  • 寝つきが悪くなる
    加齢により、眠りにつくまでに時間がかかる方もいます。「なかなか寝付けない」と不安が募り、余計に眠れなくなるという悪循環に陥ることもあります。
  • 早朝に目が覚める
    高齢になると体内時計のリズムが前倒しになり、夜は早く眠くなり、朝も早く目が覚めるようになります。本人は「睡眠時間が足りないのでは?」と心配になるかもしれませんが、昼寝をうまく取り入れれば問題ない場合もあります。

睡眠不足がもたらすリスク

高齢者が十分な睡眠をとれないと、さまざまなリスクが生じます。

  • 日中の転倒や事故のリスク
    眠気や集中力の低下により、転倒や思わぬ事故につながる可能性があります。
  • 認知機能の低下
    慢性的な睡眠不足は、記憶力や判断力の低下を招くことが知られています。
  • 心身の健康悪化
    免疫機能の低下、気分の落ち込み、血圧や血糖値の悪化など、心身両面への悪影響が懸念されます。

睡眠の質を上げるためのポイント

高齢者の睡眠の質を上げるために、生活習慣の工夫が役立ちます。

1. 朝の光を浴びる

朝、自然光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜に眠気が訪れやすくなります。朝食の時間を一定にすることもリズムを整える助けになります。

2. 日中の活動量を増やす

軽い運動や散歩、趣味の時間など、日中の活動量を増やすと夜に自然と眠くなります。家事や買い物も良い運動になります。

3. 昼寝は短めに

昼寝は20~30分程度にとどめるのが理想です。長く寝すぎると夜の眠気が減り、かえって不眠につながることもあります。

4. 寝る前のリラックス

ぬるめのお風呂に入る、好きな音楽を聴く、ストレッチをするなど、心と体をほぐす時間を作ることで、寝つきが良くなります。

5. カフェインやアルコールに注意

コーヒーや緑茶などのカフェイン飲料、アルコールは睡眠の質を下げる可能性があります。特に午後以降の摂取には注意が必要です。


睡眠障害が疑われる場合は受診を

「布団に入っても何時間も眠れない」「日中の眠気が強くて生活に支障がある」などの症状が続く場合は、医療機関の受診を検討してください。不眠症のほか、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群などが原因となっていることもあります。

また、高齢者は複数の薬を服用していることも多く、その中には眠気や覚醒に影響するものがあります。薬の見直しによって改善するケースもありますので、かかりつけ医に相談してみましょう。


家族ができるサポート

高齢の親が睡眠で困っているとき、家族ができることは「気づき」と「環境づくり」です。

  • 話を聞く
    「眠れない」と訴えても、「年だから仕方ない」と片付けず、まずはしっかり話を聞きましょう。心理的な安心感が症状を和らげることもあります。
  • 環境を整える
    寝室の温度・湿度・照明・寝具の見直しは効果的です。エアコンの使い方、掛け布団の重さ、枕の高さなど、些細な調整が快適な睡眠につながる場合があります。
  • 医療機関への同行
    本人が受診をためらうこともあるため、家族が付き添うことで診察や相談がスムーズになります。親がどうしても受診を拒む場合は、第三者から受診を勧めてもらうことも有効なアプローチです。

まとめ ― 睡眠の質を見直すことが健康寿命につながる

9月3日の「睡眠の日」をきっかけに、高齢の親御さんの睡眠状況を振り返ってみてはいかがでしょうか。質の良い睡眠は、体力や認知機能、精神的な安定にも大きく影響します。
「よく眠れているかな?」と声をかけるだけでも、親御さんが安心し、困りごとを話しやすくなるかもしれません。小さな気づきが、心身の健康を守る第一歩になるのです。