世界自殺予防デーに寄せて──高齢者の心に寄り添うために
9月10日は世界自殺予防デーです。難しい話題ですが、高齢者のうつ病について考えてみたいと思います。
高齢期は、体の変化、家族や友人との別れ、社会との関わりの減少など、精神的な負担が増える時期でもあります。今回は「高齢者のうつ病」に注目し、家族として何ができるかを整理してみましょう。
高齢者のうつ病が見過ごされやすい理由
高齢者のうつ病は、若い世代に比べて気づかれにくいといわれています。その理由にはいくつかあります。
- 症状が体の不調と重なりやすい
眠れない、疲れやすい、食欲がないといった症状が、加齢によるものと誤解されがちです。 - 本人が「年のせい」と考えてしまう
気分の落ち込みを「年だから仕方ない」と感じ、助けを求めにくい傾向があります。 - 周囲が変化に気づきにくい
同居していない場合や連絡が少ない場合、心の変化を察知する機会が限られます。
このように「気づきの遅れ」が症状の悪化につながることもあり、早期発見がとても大切です。
見逃してはいけないサイン
次のような変化があった場合、うつ病のサインかもしれません。
- 以前楽しんでいた趣味や外出に興味を示さなくなった
- 家族や友人との電話や会話が減った
- 表情が乏しくなり、声が小さくなった
- 睡眠の乱れが続いている
- 「迷惑をかけたくない」「いなくなった方がいい」などの発言がある
特に「死にたい」「消えたい」といった言葉があった場合は、すぐに医療機関や専門相談窓口に連絡することが重要です。
家族ができるサポート
家族の存在は、高齢者の心の健康に大きな支えになります。次のような関わり方を意識してみましょう。
1. 気軽に話せる雰囲気をつくる
「元気ないね」と指摘するよりも、「最近どう?」と自然に声をかけ、気持ちを聞き出す姿勢が大切です。否定せず、相手の言葉を受け止めることが信頼につながります。
2. 生活のリズムを整えるお手伝い
食事、睡眠、適度な運動といった生活のリズムが心の健康を保つ基盤になります。一緒に散歩する、食事のメニューを工夫するなど、無理のないサポートが有効です。
3. 専門家への相談をためらわない
精神科や心療内科、かかりつけ医への相談はもちろん、地域包括支援センターなどでも相談が可能です。家族だけで抱え込まず、早めに専門家へつなぐことで回復の道が開けます。
地域や社会資源の活用
孤立を防ぐために、地域のサークル活動や高齢者向けの交流イベント、デイサービスなどを活用することも効果的です。「人とのつながり」が心の支えとなり、うつ病の予防・回復にもつながります。
また、訪問支援サービスや家事サポートなどを利用して生活負担を軽くすることで、精神的なゆとりを取り戻すケースも少なくありません。
自殺予防のためにできること
世界自殺予防デーにあわせて、改めて「自殺予防」について考えてみましょう。
- 気になる変化があれば、早めに声をかける
- 「死にたい」という言葉を聞いたとき、真剣に受け止める
- 家族だけで対応しようとせず、医療機関や相談窓口に連絡する
- 日常的に会話や交流を持ち続ける
厚生労働省や自治体では、自殺防止のための相談窓口を設けています。もしものときに迷わず利用できるよう、電話番号や窓口を家族で共有しておくと安心です。
まとめ
高齢者のうつ病は、身体の変化と重なって気づきにくく、発見が遅れることがあります。しかし、家族が日常の中で心の変化に気づき、早めに対応することで、多くの命と心を守ることができます。
9月10日の世界自殺予防デーをきっかけに、親や身近な高齢者との関わりを見直してみませんか。声をかけること、寄り添うこと、その一歩が大切な人の未来を支える大きな力になります。



