9月9日は救急の日――高齢の親を守る“もしも”の備え

9月9日は「救急の日」です。救急医療や救急搬送の大切さについて理解を深めるために制定されたこの日。特に高齢者は体調の変化が急激で、わずかな症状の変化が大きな病気の前触れであることもあります。
この機会に、親御さんや身近な高齢者の「もしものとき」に備えるポイントを一緒に見直してみましょう。


高齢者に多い「救急搬送」の原因を知る

まず知っておきたいのが、高齢者に多い救急搬送の理由です。消防庁の統計でも、救急搬送される方の年齢層の中で、高齢者の割合は年々増えています。代表的な原因には次のようなものがあります。

  • 転倒・転落による骨折や頭部外傷
  • 心筋梗塞や脳卒中などの循環器系疾患
  • 呼吸器疾患(肺炎など)による呼吸困難
  • 脱水や熱中症による意識障害
  • 誤嚥性肺炎などによる急な発熱・呼吸苦

いずれも「少しの違和感」で済ませてしまうと、症状が急激に悪化することがあります。家族や周囲が早めに異常を察知できるよう、日頃から体調の変化に敏感であることが大切です。


「いざ」というときに困らないために準備しておきたいこと

突然の救急時、慌ててしまい、何をどう伝えればいいかわからなくなることはよくあります。
事前に備えておくことで、救急隊や医療機関での対応がスムーズになり、命を救う可能性が高まります。

1. お薬手帳や診療情報をすぐ出せるようにする

高齢者は複数の病院やクリニックにかかっていることが多く、飲んでいる薬の情報が重要になります。

  • お薬手帳
  • かかりつけ医の連絡先
  • 既往歴・アレルギー情報

これらをまとめてわかりやすい場所に置いておくと安心です。

2. 家族や親しい人の連絡先をまとめる

救急搬送時、家族への連絡がすぐにつかないと困るケースも。
緊急連絡先は紙に書いて目立つところに貼る、スマホに「ICE(In Case of Emergency)」として登録しておくなど、連絡手段を複数確保しておきましょう。

3. 自宅の鍵や住所をわかりやすくしておく

救急隊が駆けつけても、鍵が開かず入れないケースがあります。
信頼できるご近所や親族に合鍵を預ける、玄関に番地をわかりやすく表示するなど、救助がスムーズに行えるよう工夫が必要です。


救急車を呼ぶべきか迷ったら?

高齢者は症状がわかりにくいことが多く、「もう少し様子を見よう」と判断を遅らせてしまいがちです。
次のような症状があれば、迷わず救急車を呼びましょう。

  • 顔のゆがみ、言葉が出にくい、手足のしびれ(脳卒中の可能性)
  • 胸の強い痛み、冷や汗、吐き気を伴う(心筋梗塞の可能性)
  • 意識がもうろう、返答ができない
  • 呼吸が苦しい、ゼーゼーする、唇が紫色になる
  • 急に立てなくなった、動かせない部位がある
  • 転倒して頭を打った後に吐き気や意識変化がある

救急車を呼ぶか迷った場合には、各自治体の「救急安心センター(#7119など)」に電話して相談するのも有効です。


救急時のトラブルを防ぐために

救急時に慌ててしまい、搬送先で家族が付き添えない、治療方針の確認ができない、といったトラブルを防ぐために、次のような準備もおすすめです。

  • 家族で治療方針を話し合っておく
    延命治療や手術の希望など、万が一の判断を家族が代わってできるようにしておくと安心です。
  • 地域の見守りサービスや医療・介護連携の仕組みを把握する
    地域包括支援センターやかかりつけ医と連絡がとれる体制があると、救急時のサポートにつながります。
  • 日常的な健康管理の習慣をつくる
    血圧測定、体温チェック、服薬管理など、普段から体調の変化を把握することが、救急を未然に防ぐ第一歩です。

救急の日をきっかけに「安心の仕組みづくり」を

救急の日は「救急医療を正しく理解し、必要なときに迷わず行動できる」よう意識を高める日です。
高齢者にとっては、救急搬送のリスクが他の世代に比べて高く、また判断の遅れが重症化につながることも少なくありません。

この日をきっかけに、親御さんの健康状態や生活環境を見直し、救急時の連絡・搬送・治療の流れがスムーズにいくよう準備しておきましょう。
家族や周囲の支えがあることで、安心して暮らし続けることができます。